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頭蓋内動脈狭窄症





頭蓋内動脈狭窄症について


頭蓋内には脳に酸素と栄養を供給する血管がはりめぐらされており、絶えず血液を脳に送っています。脳梗塞には様々な原因がありますが、頭蓋内血管の内腔が狭くなる(狭窄)とその血管の血流が悪くなり、脳が虚血状態(血流不足)となって一過性脳虚血発作や脳梗塞の原因となります。狭窄のある血管の場所や血流障害の程度によって現れる症状は様々で、神経症状(意識障害、運動麻痺、知覚障害、言語障害、視機能障害など)を呈し、重症の場合には、寝たきりの状態や死亡に至る可能性もあります。





頭蓋内動脈狭窄症の検査


 頭蓋内動脈狭窄症の検査の目的は、動脈の狭窄部位を詳細に観察し、狭窄の原因を推測するとともに、その血管の血流の遅延や低下があるのか、その血管が血液を送っている脳組織に悪影響を及ぼしているのかどうかを判断することです。これらの目的のためには、脳血管撮影検査が必須であり、他の検査と合わせて数日間の入院が必要となります。

当院では、以下の検査項目を行っています。


1) 脳血管撮影


血管撮影で、狭窄病変(矢印)とその周囲の血管構造が詳細に把握できる。

局所麻酔下で、脚の付け根の血管からカテーテルという細い管を挿入し、先端を頚部血管において造影剤を注入し、脳血管を撮影する検査です。この検査で、狭窄病変の形状を詳細に観察することができ、狭窄が生じた原因を推測したり、狭窄部近傍の正常血管構造を把握したりすることができ、血管形成術を計画するうえで、安全性の評価や手術戦略の構築に必要な情報が得られます。


2) 脳血流シンチグラフィ


 微量の放射性同位元素を注射し、それが血流に乗って脳に分布する割合を測定する検査です。この検査で、脳血流の局所的な上昇や低下、左右差を評価することができます。また、ダイアモックスという血管拡張薬を併用し、脳血管が拡張して血流が増加する程度を測定することで、脳血管の拡張する能力を評価することができます。これらの結果から、狭窄病変のある血管が脳に十分な血流を供給しているのか、狭窄病変による脳梗塞のリスクがどの程度なのかを知ることができます。


左図(安静時)、中図(ダイアモックス投与時)、右図(血管拡張予備能)
脳血流シンチグラフィで、脳血流と血管拡張力を画像化し、脳梗塞のリスクを評価することができる。この患者さんでは、脳梗塞が生じた左大脳半球(図の右側)の血管予備能が著明に低下しており、脳梗塞再発リスクが高いと判断できる。


3) 頭部CT、CTA


CTAでは、血管の狭窄部位(矢印)を含めた脳血管の全体像を明瞭に描出できる。

 X線を用いて頭部の断層写真を撮影する検査です。造影剤を注射して撮影すると血管の立体画像を作成することができ、頭頚部血管の全体像を把握することができます。


4) 頭部MRI、MRA


 強い磁場を用いて頭部の断層写真を撮影する検査です。頭蓋内の構造が詳細に描出されるため、急性期脳梗塞の検出に加え、過去の脳梗塞、微細な脳出血の検出にも役立ちます。


MRI(左)で脳梗塞病変(矢印)を検出でき、MRA(右)では、原因となった血管の狭窄病変(矢印)の存在を知ることができる。


5) 高次脳機能検査


 簡単な計算力、記憶力、注意力のテストを行い、脳の情報処理機能に異常あるか評価する検査です。狭窄病変により脳血流が低下している場合や、すでに脳梗塞を発症している場合には、高次脳機能が低下していることがあります。


6) その他


 全身麻酔で行う治療に際して麻酔の危険性などを評価するため、胸部レントゲン検査、心電図検査、心臓超音波検査、呼吸機能検査、冠動脈CT検査などを、必要に応じて行います。





頭蓋内動脈の治療


 治療の目的は、血管の狭窄によって引き起こされる脳梗塞を予防(再発予防)することです。方法としては、1)内科的薬物治療、2)直達手術による血行再建(バイパス術)、3)血管内手術による血行再建(バルーン血管拡張術、ステント留置術)があります。内科的治療としては、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの動脈硬化悪化因子のコントロールとともに、狭窄部に生じる血栓形成予防、血流改善を目的とした抗血小板療法を行います。しかし、症候性(脳虚血発作を発症)の高度狭窄(血管径で70%以上の狭窄)を有する場合には血行再建術を行ったほうが脳梗塞の予防効果が高いことが証明されています。



血行再建術について


 血行再建の方法には直達手術と血管内手術があります。直達手術では、開頭して狭窄部より末梢の血流が低下している脳血管に、頭皮の血管を吻合して血流を補う手術(バイパス術)が一般的です。この治療法は開頭して脳を露出する必要があること、頭皮の血流が頭蓋内へ移行することから、脳損傷、出血、感染、創部治癒不全などの合併症のリスクが高くなります。また、病変の部位によっては手術の難易度が高くなります。
 これに対して、血管内手術による血行再建術は、血管内部から狭窄部を拡張する手術であり、開頭を必要としないこと、頭皮の血流を犠牲にしないことから、上記のような直達術特有の合併症のリスクを伴わず、病変の部位による影響も直達手術に比べて少なくなります。しかし、全身の動脈硬化などにより頭頚部血管の屈曲が高度な場合には、血管拡張に用いるカテーテルを狭窄部位まで誘導できない場合があります。また、血管内手術では、特にステント(後述)を使用した場合には強力な抗血栓療法を長期間継続する必要があり、将来の出血に対する不安が生じます。
 きちんとした大規模臨床試験のデータはありませんが、脳梗塞予防効果としては、直達手術でも血管内手術でも同等の治療効果が期待できると言われています。





血行再建術を行わなかった場合にはどのような予後になるか


 手術をせずに経過観察する場合、上記の内科的治療を行いながら定期的に画像を撮影し、狭窄の進行および脳梗塞の発症の有無を観察します。狭窄が自然に改善する可能性は低く、狭窄が進行した場合には脳梗塞が発症するリスクが上がり手術難度も上昇するため、早い段階での手術治療が勧められます。