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トップページ > 硬膜動静脈奇形

硬膜動静脈奇形



発生原因には断定的な説はありませんが、後天性の疾患と考えられています。硬膜の静脈の多くは、硬膜によって形成された静脈洞という太い静脈に集まってきます。これらの静脈洞もさらに合流して、最終的には心臓に向かって戻っていきます。この静脈洞が何らかの炎症や血栓が生じて閉塞することにより、静脈の流れが障害された結果として生じるという説があり、有力とされています。硬膜の膜上に動静脈シャントができても、硬膜の栄養に関して問題になることはありませんが、シャントが硬膜にあることによって、硬膜の動脈が静脈洞に直接流入していきます。そのため流入量が多くなると静脈の圧力が上がってしまい、正常な静脈の流れが保てなくなります。
その結果、本来そこに流れていくべき静脈に「血液の交通渋滞」が起きてしまい、その部分の組織の循環障害や静脈の逆流を起こします。これらの現象がどこで起こるかによって症状は様々ですが、代表的なものとして以下のような症状があります。


  • 眼の充血、腫脹、突出
  • 拍動性の耳鳴
  • 頭蓋内出血
  • 認知機能障害
  • 脊髄の場合、四肢の感覚障害および運動障害、膀胱直腸障害など


眼の症状、拍動性耳鳴は自覚しやすい症状といえますが、硬膜の静脈だけではなく脳の静脈まで逆流が及ぶと、脳内の血流がうっ滞し、血管が破綻して出血を起こすことがあります。出血のしかたとして、急性硬膜下血腫(脳表面)、脳出血(脳内)、くも膜下出血(脳の隙間)などの単独や混合型の出血が見られます。また、血管の破綻は起こさなくても脳循環障害による脳の機能低下によって認知症が起こることもあります。
動静脈シャントの部位によって以下のように分類されます。
頭の位置でだいたいどの辺りか、イメージして頂ければいいかと思います。



海綿静脈洞部


内の調査では本疾患の約50%がこの部位に見られます。
脳の静脈や眼の静脈が流れてくる重要な部位です。この静脈洞内の圧が上がると眼の静脈のうっ血やさらに進むと逆流を生じ、眼の充血、腫脹、眼球の突出、複視など眼症状が出ます。拍動性耳鳴がすることもあります。
軽微な症状のこともありますが、重度の眼症状、脳静脈への逆流による脳出血などの危険性もあります。


横・S状静脈洞部


国内の調査では本疾患のうち2番目に多く、約30%で見られます。
部位からも拍動性耳鳴は特徴的な症状です。その他、脳静脈のうっ血の程度によっては脳出血や認知機能障害などを起こすこともあります。


その他


頻度は低くなりますが以下のような部位もあります。

  • 前頭蓋底
  • 上矢状洞部
  • テント部
  • ACC部
  • 頭蓋頚椎移行部


脊髄


脊柱の椎骨と椎骨の間に神経が通る隙間がありますが、そこの硬膜に動静脈シャントがあります。脊髄静脈へ逆流することによって脊髄内で静脈がうっ滞して、脊髄の虚血が起こります。四肢の感覚障害および運動障害、膀胱直腸障害など脊髄症状で発症します。


症状や緊急性は病態の進行度によって様々ですが、その部位の硬膜において、微細なレベルで動脈と静脈がつながっており、そのため静脈の流れが増す、圧力が増す、本来の流れと違う方向に向かう、逆流する、それにより細胞が正常に維持できなくなる、血管が破綻するといった症状を出すのがこの疾患の本体です。
つまり、治療ではこれらの過剰なシャント血流をどのようにして消失、あるいは低下させるかを考えます。どの血管が鍵になっているかを診断し、綿密な治療計画を立てることが必要で、そのためには術前の詳細な検査が必要であり、先に述べました検査が必須です。





治療


カテーテルや塞栓物質の進歩によって、この疾患の大部分は血管内治療単独で治療できるようになりました。血管内治療をさらに分けると、経動脈塞栓術(シャントに流入する動脈をカテーテルからコイルや液体塞栓物質でつめる方法)、経静脈的塞栓術(静脈をカテーテルからコイルや液体塞栓物質でつめる方法)、両者の併用の3つの方法があります。






血管内治療


カテーテルや塞栓物質の進歩によって、この疾患の大部分は血管内治療単独で治療できるようになりました。血管内治療をさらに分けると、経動脈塞栓術(シャントに流入する動脈をカテーテルからコイルや液体塞栓物質でつめる方法)、経静脈的塞栓術(静脈をカテーテルからコイルや液体塞栓物質でつめる方法)、両者の併用の3つの方法があります。


外科的治療


血管内治療を行おうとしても、病変部(シャント)へカテーテルを到達させることが困難な場合や、シャント血流が静脈洞を介さずに直接に動脈から静脈に流れていく場合には静脈洞を閉塞させることができません。その場合は開頭して本来閉塞させたい血管を直視下に焼灼、切断します。


複合的治療


開頭して目的の血管にカテーテルを直接挿して、カテーテルを通して閉塞することもあります。


放射線治療も行われていますが、効果は短期間で出るものではなく、第一選択になることはありません。
この疾患の治療としては血管内治療を第一選択とし、それが困難な場合には外科手術が選択されます。経静脈的、経動脈的塞栓のいずれにおいても治療が不完全に終わった場合や治療後の再発などには放射線治療も検討されます。