すべての合併症を含めると発生する危険は5%程度です。
代表的な合併症には以下のものがあります。
経動脈的塞栓術の際に塞栓物質が正常血管に迷入したり、経静脈的塞栓術の際に血液灌流が阻害されたりすることで、正常脳組織への血流が低下することがあります。これらの場合、脳梗塞を発症して、意識障害、手足の麻痺、言葉の障害などが生じることがあります。手術中には前述したモニタリングを行っていますが、異常を完全に検出できるとは限らないうえ、脳血管の操作により一定の割合で脳梗塞は発生します。
細心の注意を払ってカテーテルを操作しますが、血管損傷や塞栓後の脳血流の変化により出血を来すことがあります。出血が少量の場合は頭痛程度のこともありますが、大出血が生じると、意識障害や言語障害、手足の麻痺などの神経障害を引き起こし、生命に危険が及ぶ可能性もあります。出血がコントロールできない場合や出血量が多い場合には、緊急で開頭手術が必要となることがあります。
眼を動かす神経の麻痺が術後に出現、悪化することがあります。これは塞栓物質による圧迫や炎症によるもので、多くの場合は一時的ですが、治癒せずに残存することもあります。
4) 薬剤、塞栓物質などによるショック、アレルギー症状
血管内手術のためには造影剤をはじめ多くの薬剤を使用します。これらの薬剤の安全性は高いのですが、人によってはまれに過敏な反応(アレルギー反応)や予想外の副作用症状を生じることがあり、ひどい場合には血圧低下、ショック状態となり、死亡する可能性もあります。また、塞栓物質による炎症反応により発熱や頭痛が生じることがあります。
長時間頭部の同じ場所に放射線が当たることにより、一時的に頭髪が抜けたり、皮膚が赤くなったりすることがあります。
カテーテルを挿入した穿刺部から出血して血腫(内出血)を形成したり、血管の壁が薄くなって血管が膨れ、動脈瘤を形成したりすることがあります。
手技に伴って他臓器に負担がかかって機能が低下し、心不全、呼吸不全、肝不全、腎不全などに陥る可能性があります。また、厳重な術中、術後管理を行っていても予想できない事態が生じ、最悪の場合には死亡したり、重い後遺症を残したりする場合もあります。
万が一上記にあげた合併症が生じた場合には、追加治療や外科的手術を行わなければならないこともありますが、いかなる場合も最善の処置を施します。また、カテーテルが目的血管にうまく到達しない場合、塞栓物質が安全に挿入できない場合、上記にあげた合併症が生じる危険性が高いと判断した場合には、手技を途中で中止する場合があります。