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開頭血腫除去術



A. 手術方法

文字の通り、頭(頭蓋骨)を大きく開け、血腫を除去する手術です。これにより脳の圧迫を解除することができ、更に二次的に起きる脳のむくみを軽減することができます。全身麻酔をかけて行います。脳神経外科の手術において、最近は小さく開ける手術(小開頭手術)が盛んに行われていますが、上記のような頭部外傷で行う緊急手術では、小開頭手術はほとんどありません(患者さんの容態や元々の状態から大きく頭を開ける手術が耐えられそうにない場合のみ考慮します)。
血腫のすぐ上を覆っている頭蓋骨が可能な限り全て開くような手術範囲とします。なぜなら、血腫が頭蓋骨の下で隠れていると、そこの血腫は取り除くことができないためです。従って、血腫が厚くても狭い場合より、薄くても広い場合の方がより開頭範囲が広くなる傾向になります。
また、血腫の存在する位置によって、どこまで深く手術を行うかが異なります。硬膜外血腫の場合は頭蓋骨を開けると血腫がありますが、硬膜下血腫の場合は頭蓋骨を開け、更に硬膜も切らないといけません。脳挫傷の場合は硬膜を開け、更に脳内にアプローチしていきます。深くなればなるほど時間もかかりますし、切るものも多くなりますので術後出血のリスクや髄液漏のリスクが高まります。
また、下側への脳の圧迫を起こすと「脳幹」という生命維持中枢にダメージを与え、死に至ることがあるため、これを少しでも減らすために多くの場合、頭蓋骨下側の切除も追加で行います。これによって下側へ圧迫したとしても脳幹ではなく、外側に圧を逃すことで救命することを目的とします。
血腫を取る際に開けた頭蓋骨はすぐに戻さず、脳の腫れが引くまで外したままにする場合もあります。このことを外減圧術(減圧開頭術)と呼びます。

B. 手術の危険性

1)術中・術後出血

開頭による頭蓋内血腫の除去をおこなうためには、血腫に至るまでに頭皮や筋肉を切ったり剥離したりした上で、頭蓋骨の一部を医療用のドリルやカッターを用いて切り開かなければなりません。更に硬膜下血腫なら硬膜を、脳挫傷なら脳の一部を切り開き血腫に到達しなければならないことがしばしばあります。そのため、手術に伴う出血量が多くなることが多いです。また、頭部やその他の手足、体の外傷も伴っている場合は、それだけでもすでに貧血を起こしている場合もあります。
元々血液がサラサラになる薬を飲んでいる場合は手術の時に血が止まりにくかったり術後にダラダラと出たりすることもあります。また、頭部に限らず、重症の外傷の時は、血液が固まりにくくなる状態(血液凝固異常)になることもあり、手術中の出血量の増加や術後の出血の原因になったりします。出血量が多い場合は貧血になったり血圧が過度に低下したりする可能性があり、その場合は点滴をかなり多く投与したり、輸血を行ったり、血圧を上げる薬を投与したりすることがあります。また、術後出血で、再度硬膜下、あるいは硬膜外に出血が溜まり、再手術が必要になる可能性もあります。

2)異なった部位からの出血

頭部外傷で起きる出血は1か所だけということは少なく、大抵いくつかの出血や血腫を合併することが多いです。大きな出血・血腫を認めた場合その血腫を除去する手術を行いますが、違う場所にも手術を行わなくても良いくらいの少量の出血を認めることがあります(例えば大きな急性硬膜下血腫の内側に少量の脳挫傷や、右側の大きな硬膜外血腫と左側の少量の硬膜下血腫など)。しかし、大きな出血を除去する手術を行って、手術後に頭の検査をすると、少量であった血腫が増えており、こちら側も手術を行わなければいけない状態なることもしばしばあります。これも、元々血液サラサラの薬を飲んでいる人や、重症の外傷で血液凝固異常を起こしている人はその可能性がより高くなります。

3)手術後に起こりえること

最初に念をおしておかなければならないのは、この手術の目的があくまでも救命であるということです。もちろん硬膜外血腫のみで脳に傷がついていなければ、血腫を除去することで術後の経過が非常に良いという場合もあります。ただ、頭を強く打って手術が必要な状態では脳には全く傷がついていないということの方が少ないことかもしれません。ただ、開頭により血腫を取り除いてもダメージを負った脳の腫れが強くそのために脳が圧迫され死亡することもあります。また、術後意識が回復せず、いわゆる植物人間になる可能性もあります。また意識の回復が見られても麻痺などのためそのまま寝たきりの状態になる可能性もあります。

4)感染

生体は皮膚、粘膜などに被われ外からの微生物の侵入を防いでいます。開頭手術により脳、硬膜、皮下組織などが露出されてしまいます。我々は無菌手術を心がけていますが、手術の際微生物の侵入を100%ゼロにすることは現在の医学水準からは困難です。従って、術中、術後にわたりこうした微生物を死滅させる薬剤すなわち抗生物質を投与します。多くの患者さんではこうした治療により術後感染の問題は生じませんが、患者さんの抵抗力が弱かったり、抗生剤の効き目が悪かったりすると術後、細菌性髄膜炎、脳膿瘍、皮下膿瘍、硬膜外膿瘍などの感染性合併症を生じる可能性があります。また、意識障害の強い患者さんの場合、喀痰の排出が不十分で容易に肺炎などの肺合併症を起こしてそのことが命取りになる場合もあります。

5)麻酔、輸血、薬剤などによるショック、肝炎の感染の危険性

開頭手術のためには麻酔薬、抗生物質をはじめ様々な多くの薬剤を使用します。これらの薬剤は高い安全性が確立されていますが、人によっては使用した薬剤に対し過敏に反応し、薬剤アレルギーや予期せぬ副作用を生じることがあります。手術時、皮膚切開などからの出血をできるだけ少なくすることを心がけますが、出血量が多くなると輸血をする必要があります。輸血用の血液は病院で用意します。これらの血液はすべてB型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルス、エイズウィルス、梅毒の検査がすべて陰性のものです。しかし、これらの検査は100%完全ではなく稀に輸血によってこれらの感染症にかかることがあります。

6)

糖尿病、高血圧、肺気腫、胃潰瘍、パーキンソン病、内分泌疾患、精神疾患など様々なこれまで顕在化していなかった疾患が手術を契機として発症することがあります。また、これまで既往疾患として持っておられる病気がより重くなることもあります。  

7)

7)手術時間が長くなり同じ体位をとり続けると、手術台などの器具に接触している手足、体部、胸部などに褥創を生じることがあります。また、眼球部が圧迫を受けると失明することもあります。

8)その他予想外の合併症

我々は厳重な術中、術後管理にてこうした合併症の発生を防止するよう努力しますが、残念ながら予想できない事態が起こってこうした合併症を生じることがあります。これらの合併症を生じ、最悪の場合は死亡したり、重い神経後遺症を生じたりする可能性もあります。